ムーリットの糸棚の中でも貴重な存在、Woolie Batt(ウーリーバット)のレースウェイトの手編み糸「1ply lace」。
残念ながら今回が最後の入荷になり在庫も少なくなっていますが、マニアックなニッターさんに愛され続ける糸の魅力を、いま一度探ってみたいと思います。
ウーリーバット「1ply lace」糸単品やキットなど関連商品はこちらから
■Woolie Batt(ウーリーバット)について

ムーリット最初の書籍「こんな糸で編んでみたい」でも紹介したWoolie Batt(ウーリーバット)。
最初の出合いは、イギリスのヨークシャーで開催された小さなウールフェストでした。

ウーリーバットは、ヨークシャーの海辺の町、ブリドリントンを拠点にジョーさんとポールさんがつくる手編み糸。
地元の小規模運営の牧場から羊毛を集め、毛糸にして収入を得るシステムをつくったのがジョーさん。集められた原毛は、同じ地域にあるポールさんの工場で紡績されます。
地元の希少品種のウールをひろく普及することに情熱を注いできたウーリーバットは、廃棄処分されてしまうはずだった羊毛もユニークでいきいきとした手編み糸に変身させてきました。少量ずつしかつくられないこともあって、ムーリットでは入荷のたびにすぐ完売してしまう人気者。
昨年、ウーリーバットとしての糸づくりは終了してしまい、「1ply lace」の販売も最後……でしたが、ポールさんの工場で未出荷の毛糸が見つかったとのこと。今回は在庫のすべてをムーリットに送ってくれたのでした。

残念ながら今後再入荷の予定はありませんが、ポールさんの紡績工場は稼働中。またいつか、古い紡績機械ならではの味のある表情の、上質な手編み糸を届けてくれることを願っています。
■1ply(シングルプライ/単糸)の特徴
「1ply」(シングルプライ)とは単糸のことで、繊維を紡績した1本の糸を指します。
手編み糸の多くはこの単糸を数本合わせ、紡績のときの撚りと逆方向の撚りをかけて作られています。
単糸の手編み糸も、素敵なものがたくさん。今回のウーリーバットのように、ムーリットの糸棚にもセレクトすることがあります。

1ply(シングルプライ/単糸)の糸には、どんな特徴があるのでしょうか。
・複数本撚り合わせた糸よりも、素材の個性が際立つ
・しっかりと撚りのかかった糸にはコシがあり、編地にシャリ感が出る
・糸の太さにムラが出ることがあり、素朴な雰囲気の仕上がりになる
・1方向にねじる(撚りをかける)ため、編地が斜行しやすい(特に輪編みのとき)

同じように見える白~クリーム色の糸でも、羊の種類が異なると編みあがったとき(仕上げたとき)に確かに「違い」がわかります。
編地にあらわれるシャリ感も、羊によって感じ方がかわるのがおもしろいところ。
素材の個性が活きる単糸の「1ply lace」は、ウーリーバットの想いがダイレクトに伝わる手編み糸と言えそうです。
そして、ちょっと気になる斜行について。
ウーリーバットの糸はしっかりと撚りがかかっているタイプなので、特に輪編みの場合は編地が斜行します。
編み糸の撚りをゆるめながら編んだり、ブロッキング仕上げをするときに編地を矯正するように整えて乾かすことで、ある程度解消することができます。
スワッチなど試し編みをしたら洗いをかけて、編地の様子をじっくり観察してみるといいと思います。
■今回やってきた「羊」を紹介します
世界に1,000種以上いるといわれている羊たち。
今回入荷の「1ply lace」の素材となった羊毛について、ムーリットにある資料にその姿を探してみました。
すでに完売してしまったものもありますが、いつかの参考に一緒に紹介しますね。

「Masham Lambswool」
さりげない光沢のある縮れ毛が特徴のマシャム。中でも柔らかなラムウール(子羊)の羊毛からつくった毛糸です。
しなやかさの中にもシャリ感のある、風合いのよい編地になりました。

「Kerry Hill」
目の周りをはじめ、鼻や耳、足先などがパンダのように黒くて愛らしいケリーヒル。
みっちりとした短くやわらかな羊毛は、家具の張地の素材にも使われています。
編地を洗いにかけたら、白さが際立ちました。

「Bluefaced Leicester Cross Lambswool」
繊維が細く、しなやかさと光沢のあるブルーフェイストレスターの交配種。
大変やわらかなラムウール(子羊)の原毛を使用しています。
(写真はBluefaced Leicesterです)

「Wensleydale Lustre Wool」
くりくりとした長い毛が特徴の、大きなからだのウェンズリーデール。
Lustreの名のとおり、シルキーな光沢がたのしめるレース糸です。


「Alpaca & Shetland blend Storm」
「Alpaca & Shetland blend Cream Fudge」
アルパカとシェットランドウールをブレンドした、Limited Editionの糸。
よく見ると杢のように色が混ざり合った、絶妙なカラーも魅力。
特にこげ茶の「Storm」はシェットランドウールのブラックとも違う、濃淡のブラウンが複雑に絡み合ったようなかっこいい色味です。80%アルパカ、20%シェットランドのブレンドで、滑らかさの中にコシが感じられる編みあがりです。
■洗いをかけてふわふわに
ウーリーバットの糸での編み物に欠かせないのが、最後に「洗いをかけて」仕上げること。
糸をつくる工程でついた脂分(このおかげでしっとりして編みやすい)が残っているので、ウール用の洗剤を使って脂分を落としましょう。
実際に、Kelly Hillのスワッチに洗いをかけてみます。

JP5号の棒針で、気になっていたレース模様のスワッチを作りました。
また、洗ったあとの変化がわかるようにちいさなメリヤス編みの試し編みも。
どちらも、撚りはゆるめずそのまま編んでいます。

ウール用洗剤「ユーカラン」を使って洗います。
ユーカランは2025年4月1日より価格改定しますので、3月中のお買い物がおすすめです。

ウールのニットと同じ要領で、優しく編地を押し洗いしたのち、少しつけ置き。脂分が落ちて、水が濁ってきました。

タオルで包んで水気を切ったところ。メリヤス編みのスワッチは特に斜行しています。

編み目を整えてブロッキングしました。編んだまま(針にかかった編地)と比べると、ふわふわの毛足があらわれて糸全体がふっくらとしたよう。
色もだいぶ白くなりました。

■やっぱりショールが編みたくなります
残り少なくなってきたウーリーバット「1ply lace」ですが、ここからは実際に編んだ作品例を紹介します。
レース糸で編むバンダナキット

2玉の「1ply lace」を使って編む、小ぶりな正方形のバンダナです。
往復編みではなく、中心からクンストレースの作り目でスタート、4か所で増し目をしながら大きくしていくパターン。
メリヤス編みを輪で編むので、編地は斜行していきます。
写真の作品例は斜行しないように矯正していますが、そのままでも掛け目部分のラインが回旋して風車のようでいい雰囲気になるデザイン。
メリヤス部分を多くしたので、甘さ控えめですっきりつけられる巻きものです。
パターンにはコンパクトなSサイズから肩を覆うことのできるLサイズまで、3サイズの編み方を掲載しています。お好みの大きさを選んで編んでください。
【新作】ロンビック模様の三角ショールパターン

こちらは新作のかぎ針で編むショールパターン。材料(糸)は別売で、作品例は「1ply lace」(Bluefaced Leicester Cross Lambswool)を2玉使って編みました。
かぎ針編みの基本テクニックで編む、軽やかなひし形模様を全面に配したプロジェクト。三角の頂点から模様を増やしながら編み進めます。
ムーリットの店頭で、ひと足先にサンプルを見てくださったお客様からも「春らしいコーディネートができそう」と好評のデザインです。
このパターンにはもうひとつ、「シェブロン型ショール」の編み方も一緒に掲載。
三角ショールをひとひねり、ロンビック模様を編みながらユニークなシェブロン型に仕上げる作品です。
どちらもウールやアルパカはもちろん、リネンやコットン、シルクなどさまざまな素材のレースウェイト糸に似合うパターンです。
印刷版・PDF版のパターンをご用意しています。
「ロンビック模様の三角ショール/シェブロン型ショール」パターンはこちらから
糸の在庫はわずかとなりましたが、ウーリーバットの糸づくりに思いを馳せながら、素敵な作品を編んでくださいね。
Woolie Batt 「1ply lace」

素材 :100%ウール または 80%アルパカ、20%ウール
重さ : 約50g
長さ : 約350m