金森美也子さんにお話を伺いました【第1話】

In Diary

9月より、金森美也子×MOORIT「森のともだち」キットシリーズが再開します。

ひと目見た瞬間に心が奪われてしまう、チャーミングなぬいぐるみをつくる金森美也子さん。その魅力に改めて迫ってみたいと思います。

ぬいぐるみをつくり始めたきっかけや、創作のひみつ、お道具のことなどなど……気になるあれこれを教えていただきました。


金森 美也子 Miyako Kanamori

ぬいぐるみ作家。1970年神奈川県生まれ。1998年より古着や日用品を使った動物のオブジェやぬいぐるみの制作を開始。展示や書籍で発表するかたわら、ぬいぐるみ作りのワークショップも行っている。著書に「りすが作る、手袋でぬいぐるみ」「白くまワールド」(文化出版局)、「nui-gurumi」(FOIL)、「軍手ネコのつくりかたBOOK」(光文社)、「古着で作るぬいぐるみ」(産業編集センター)などがある。

金森美也子さんにお話を伺いました【第2話】もぜひご覧ください

 


 

はじまりは「焼き芋」から

--- ぬいぐるみをつくるきっかけについて、最初につくった作品について覚えていらっしゃいますか?

最初につくった作品は、4~5歳のころ、新聞紙をまるめてテープで留めてから色付けしてつくった「焼き芋」です。
その後、幼稚園で“紙のお金でお買い物”をするバザーのような行事があったのですが、そのときもやっぱり「焼き芋」をつくりました。お芋型に切った紙を2枚貼り合わせて色を塗ったもので、お友だちにも大人気。たくさんつくって、どんどん売れて嬉しかったな、という思い出があります。お芋好きな少女でした。

 

--- かわいらしいエピソードですね!フリーランスで活躍されるようになって、これまで特に印象に残っている作品について教えてください。

ぬいぐるみ作品の前はオブジェをつくっていたのですが、そのころ個展でディスプレイしていたダルメシアンをきょうは紹介します。メインの展示作品ではなかったのですが、この子に注目が集まって、“アフタヌーンティー” で販売された(金森美也子さんの)カレンダーにも登場しました。

 


いまではお茶の箱の中に大切に保管されているダルメシアン。表情も質感もすてきな作品です


 

ぬいぐるみ作品は販売することもあって、実は手元にはほとんど残りません。それでも、気に入った端切れでちいさな作品をつくることがあります。このふたつは、ヘリンボーンやウールの生地の感じがよくて、ぬいぐるみに仕立てたもの。すずめは「おしゃれぐまクゥクゥのたのしい一日」のことりと同じような構造です。

 




 

 

動物たちの表情や動きをよく見ています

--- アイデアを記録するために、スケッチや創作ノートはふだんからつけているのでしょうか。

スケッチや創作ノートのようなものは、つけていません。作品をつくるときにもスケッチはほとんど描かず、直接生地を切って、頭にイメージした動物たちをつくっていきます。描くとしても、失敗コピーの裏とかに、本当に簡単にイラストを描くだけです。

それよりも、動物園で実際に動物のうごき方やからだの使い方を見て、図鑑や写真もじっくり眺めながら、表情や姿かたちをしっかりとらえるようにしています。 先日写真を整理していたら、動物園で撮影したものがたくさん出てきました。手足のひらの感じとか、実際に動物たちに会うと発見がたくさんあるんですよ。 また、動物園に行くとフリーペーパーが置いてあるのですが、動物たちのベストショットをつかってデザインされているものが多く、このコーナーを見るのもたのしみのひとつ。

ニューヨークのセントラル・パーク動物園やパリのヴァンセンヌ動物園など、海外に行った際も動物園があれば足を運んでいます。 最近では、インスタグラムでも動物の投稿をチェックするようにしています。

 


金森さんお気に入りの2冊とフリーペーパー。書籍は古い洋書のカレル・チャベックの「ダーシェンカ」と、動物の赤ちゃんについて学べるフルカラー図鑑「Amazing Animal Babies」。いずれも動物のこどもの顔つきや体の様子がよくわかって、作品をつくるときに「あの本の、あのページのあの子みたいな感じ」と浮かぶことがあるそうです


 

 

リネンならシュッと大人の雰囲気に

--- ぬいぐるみをつくるときに、材料となる生地や素材について、選ぶときのポイントなどはありますか。

材料となる生地にあわせて、どんなぬいぐるみのデザインにしようかと考えます。
リネンバードとのコラボレーションでは「リネン生地」というお題があるので、リネンに合わせてシュッとした、手足が長く、細身のスタイルで、人っぽい雰囲気のぬいぐるみになることが多いかもしれません。「いぬのフラクシィ」も、最初に試作した子は、よりほっそりとかっこいい感じにデザインしていました。

古着を素材にするときは、そのお洋服のディテールを作品に盛り込んでいます。
ムーリットで撮影をした書籍「古着で作るぬいぐるみ」に掲載した作品にもセーターや手袋などを使っていますが、ニットも好きな素材です。きょう連れてきたねこは、友人に譲ってもらった編み込みのセーターからつくった作品。身頃はもちろん、裾やそで口、えりなどのリブ部分もそのまま活かしています。
ニットはほつれませんか?とよく聞かれるのですが、返し縫いしておけば大丈夫。自由度も高く、使いやすい素材だと思います。

 


▲ セーターのねこと、リネン生地でつくった試作のフラクシィ


 

 

蓋つきのピンクッションを愛用中

--- ぬいぐるみづくりに欠かせない特別なお道具はありますか?また、お気に入りのお道具についても教えてください。

特別な道具というのはないのですが…… お家で制作するときに愛用しているのが、イイホシユミコさんのふたつきピンクッションです。愛犬がボール状のピンクッションに興味津々になってしまったことから、ふたつきのものを使うようにしています。以前リネンバードで個展をおこなったときに、知人が隣のコホロで見つけてプレゼントしてくれました。

 

 

猫の刺しゅうが入った大きめサイズのピンクッションは、数年前リネンバードで出合った刺しゅう家・村田かつ子さんの作品。ぬいぐるみの目や鼻に使いたいボタンの一時置き場として、候補のボタンを待ち針で留めておきます。お顔をつくるときには、かならず手元に置いて作業しています。

 

 

ボタン柄のちいさな巾着と、リップクリームが入っていた缶には、大きさ別にボタンを分けて入れています。普段は、たくさんのボタンや材料を収納していますが、ワークショップのときはそこから選んで、デザインのかわいい小さな入れ物で持ち運んでいます。

 


 

お話を伺うだけでなく、作品や資料、お道具などもたくさん見せてくださった金森さん。とても貴重な時間となりましたが、さらにスペシャルが。

 


最初につくったお人形については、「実物を拝見するのは難しいと思うので、イラストなどで再現していただけませんか」とインタビュー前日にお願いしていました。 当日「当時のものはないけれど、いまならどんな感じでつくるかしら、と思って……」と、金森さんが取り出したのが、やわらか素材で急遽つくってくれた「お芋」さん。

なんともやさしい雰囲気で、ふしぎな愛らしさのぬいぐるみでした。

 

 

おしゃれぐまクゥクゥのたのしい一日

クゥクゥが友だちのフラクシィのお店に洋服を探しに出かけた日のお話しを通して、ワンピースやコート、ブラウス、パンツ、セーターなどのウエアから、靴やバッグ、帽子などの小物まで、さまざまなアイテムとコーディネートを紹介した、着せ替えぬいぐるみ絵本です。

「着せ替えぬいぐるみ絵本 おしゃれぐまクゥクゥのたのしい一日」はこちらから



 

「金森美也子×MOORIT 森のともだち こぐま」


「金森美也子×MOORIT 森のともだち」シリーズがいよいよ再開。
6番めのともだちは、 愛らしい表情のこぐまの登場です。
ふわっとした毛糸で編むマズルと、鮮やかイエローの足もとがアクセントになっています。




【第2話】もお見逃しなく!


「金森美也子さんにお話を伺いました 第2話」では、ポストカードセット収録の作品から、ニットを使ったぬいぐるみを選んで素材やデザインについてお話を聞きました。