ムーリットでフェアアイル用の糸といえば、Jamison and Smith「Shetland Heritage 2ply Jumper(J&S ヘリテッジ)」。
糸の使い方を、作品とともにご紹介します。
伝統を受け継ぐカラー
Jamison and Smith(J&S)は、シェットランドを代表する糸メーカー。1930年代からシェットランド諸島で育てられた羊の原毛を用い、手編み糸やウール製品をつくり続けています。
▲ラベルは現在2種類ありますが、同じ糸です
今回のテーマ「ヘリテッジ」は、J&Sのフェアアイル用の糸の中でも特別なシリーズ。
染色したカラー全12色と、ナチュラルカラーのラインナップです。同じくフェアアイル用のJ&Sのウール糸「2ply Jumper Weight」の豊富なカラーパレットをご存知の方なら、このシリーズは色数が少ない?と思われるでしょう。
▲染色したカラーと、羊そのままのナチュラルカラー
この「ヘリテッジ」は、シェットランド博物館に所蔵されている、19世紀の古いフェアアイルのコレクションを再現した糸。当時の“Wursit”といわれる手紡ぎ糸の特性から色合いまで、キュレーターだけでなく、ウールや染色など各分野の専門家が協力して誕生しました。
限られた色数ながら、どの色の組み合わせてもしっくりと馴染みがいいのは、伝統的に使われてきた厳選されたカラーだからこそ、かもしれません。
Woosted とWoolen
ヘリテッジは、糸そのものの特徴としてWoosted(梳毛糸)ということがあります。梳毛糸とは、ウールの原毛の繊維を縦方向に紡いだもの。ハリとツヤがうまれ、強さのある糸になります。スーツ生地を織るための糸にも使われています。一方、Woolen(紡毛糸)という紡ぎ方もあり、繊維を横方向に、空気を含むように紡いだもの。こちらは弾力があり、ふっくらと編みあがります。
▲左が紡毛糸のフェアアイル糸、右が梳毛糸のヘリテッジ。ムーリットではヘリテッジを取り揃えています
ヘリテッジを編んだときに感じたのは、まず肌ざわりがするりと滑らかで気持ちがいいということ。「2ply Jumper Weight」よりも若干細めで、編地は薄手に仕上がります。また、フェアアイル模様を編むとき、糸の色を変える際に手で糸をちぎることがあるのですが、梳毛糸のヘリテッジは力を加えないと切れませんでした。
ヘリテッジでフェアアイル
フェアアイル用の糸は、やっぱり伝統的なフェアアイル模様にこそふさわしい!ムーリットでも「フェアアイルマフラーキット」としてヘリテッジの魅力を提案していました。こちらはアレンジバージョンを加えて、パターンとして近日中にリリース予定です。
★2020年10月9日「PDF版フェアアイルマフラーパターン」をリリースしました。
染色した12色の他に、同じ糸で羊そのままのナチュラルカラーも展開しています。こちらのスワッチは、6色をつかった細かなボーダー。自然のやさしい色合いにほっとします。
中央のスワッチも、スタッフが試し編みした模様。明るくチャーミングな柄になりました。
編み込みしなくても
せっかくの特別な糸、フェアアイルにしか使えない?……そんなことはありません。
先日リリースした「ヘリンボーン柄マフラー パターン」の多色使いアレンジは、ヘリテッジ6色を駆使して編みあげています。編込んだように見えますが、1段につき1本の糸で編み進めています。
書籍「これが編みたい」では、ヘリテッジを大きめの号数(8号)で編んだ「三角形のボーダーショール」をご紹介しています。ふわふわと細かい毛足があるので、大きめの号数でも目がすかすかにならず、ウールの軽やかさでだれることもありません。きっちり編み詰めたフェアアイルとは別の、ちょっぴりリラックスした雰囲気の編地になりました。
J&Sが大切にしているシェットランドの伝統を教えてくれる「ヘリテッジ」での編み物を、ぜひお試しください。
J&S Shetland Heritage 2ply Jumper
素材:100%シェットランドウール
重さ:25g
長さ:110m
おすすめの針:フェアアイル模様で棒針0-3号(US0-3/ 2-3.25mm)